日本の医療機器の分野におけるQMSとは、Quality Management System(品質管理監督システム)の略で、医療機器の分野においては薬機法に基づいて定められている「QMS省令」を指すことが多いです。
では、そのQMS省令について詳しく見ていきましょう。

医療機器及び体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理に関する省令(QMS省令)

平成26年11月25日施行の医薬品医療機器等法により、旧法から新法への再編が行われました。新たな制度においては医療機器の製造販売承認や、製造販売認証の要件としてQMS省令の重要性が増し、適合調査も製造所ごとの調査から製品の製造工程単位での調査に変わりました。

また、医療機器はGQPから除外されることになり、その内容はQMSの第3章として引き継がれることになりました。

QMSは医療機器製造販売承認の要件となったため、医療機器そのものの製造管理方法、品質管理の方法がQMSに適合していない場合、承認が与えられることはありません。認証の場合も同様です。

したがって、QMS省令に基づく品質管理システムは、医療機器の製造販売業者にとって避けて通れないものになっています。

理由としては、QMSを維持し続けることによって、製品の品質、安全性、有効性を担保し続ける必要があるからです。そのため、1回承認や認証を受けた後でも、内容を一部変更する場合や、5年を経過するごとに、QMS適合性調査を受けなければなりません。

 

QMS省令の構成について

医療機器の製造工程の改善や品質を向上していくための品質マネジメントを定めたQMS省令ですが、その構成は以下のようになっております。

第1章   総則

趣旨や定義、適用の範囲が定められています。

第2章   医療機器等の製造管理及び品質管理に係る基本的要求事項

第1節 通則

適用関係として、どのような場合に適用を要しないのかが記載されています。

第2節 品質管理監督システム

このシステムに関する要求事項や文書化、管理について記載されています。

第3節 管理監督者の責任

管理監督者の関与や品質方針、品質目標、責任や権限などについて記載されています。

第4節 資源の管理監督

この節では、教育訓練や作業環境について記載されています。

第5節 製品実現

製品を実現するための計画から、仕入(購買)、製造工程、滅菌工程などのプロセスについて記載されています。

第6節 測定、分析及び改善

品質マネジメントを維持するために必要な監視、測定、分析についての項目です。

第3章   医療機器等の製造管理及び品質管理に係る追加的要求事項

品質管理監督文書の保管期限などについて記載されています。

第4章   生物由来医療機器等の製造管理及び品質管理

第5章   放射線体外診断用医薬品の製造管理及び品質管理

第5章の2 再製造単回使用医療機器の製造管理及び品質管理

第6章   医療機器等の製造業者等への準用等

 

 QMS省令の適用範囲について

■QMS省令は医療機器等の製造販売業者の遵守事項となっています。

製造販売業者は、製造販売する品目について、製造販売業者及び登録製造所の製造管理及び

品質管理の方法がQMS省令に適合するように管理しなければなりません。

(法23条の2の15第1項)

■すべての医療機器等にQMS省令は適用されます。

平成26年11月25日の法改正後は一般医療機器(限定一般医療機器)についても、

QMS省令の一部が適用となりました。

一般医療機器のうち製造管理及び品質管理に注意を要するものとして

厚生労働大臣が指定する医療機器及び届出が必要な体外診断用医薬品については、

設計開発に係る条文以外のQMS省令がすべて適用になります。

 承認(認証)要件としてのQMS省令

■QMS省令では、品質管理マネジメントに関する規定の他、その適合性の調査についても定められています。

適合性調査は、追加的調査ともいいます。どちらも同じ調査を指しています。

QMS省令への適合は、製造販売業者の遵守事項であるとともに、

承認・認証の要件となっています。

そのため、新規承認(認証)申請・一部変更承認(認証)申請を行う際は、

原則として品目ごとに製造販売業者・登録製造所に係る

QMS適合性調査申請が必要になります。

また、承認(認証)取得後、5年ごとに定期適合性調査を受けなければなりません。

医療機器等の承認又は認証を受けようとする者又は承認等を受けた方は、承認等を受けようとするとき、承認等された事項の一部を変更しようとするとき及び承認等の取得後5年ごとに、その医療機器等の製造管理及び品質管理の方法がQMS省令の規定に適合しているかどうかについて、製造販売業者の事務所、当該医療機器等を製造する登録製造所その他の関係事業所を対象とした適合性調査を受けなければならないとされています。

※医薬品医療機器等法下でのQMS適合性調査の申請先は、

医薬品医療機器総合機構(PMDA)又は第三者認証機関です。

追加的調査は、以下の場合に行われます。

(1)承認等に係る医療機器が、次のイ.からヘ.までのいずれかに該当するものである場合

イ.原材料の一部として医薬品又は再生医療等製品が組み込まれたもの

ロ.特定生物由来製品

ハ.製造工程においてナノ材料(縦又は横の長さ若しくは高さが1ナノメ

ートル以上100ナノメートル以下の物質から成る材料をいう。以下同じ。)

が使用されるもの

ニ.マイクロマシン(当該医療機器又は体外診断用医薬品が電気その他の

エネルギーを利用するものであって、その直径が3ミリメートル以下で

あり、かつ、その部品の直径が1ミリメートル以下であるであるものを

いう。以下同じ。)

ホ.当該医療機器の全てが、最終的に人体に吸収されることが想定される

もの(ロに掲げるものを除く。)

ヘ.特定医療機器

(2)承認等に係る医療機器が、次のイ.からニ.までの全てに該当するも

のである場合

イ.滅菌医療機器(製造工程において滅菌される医療機器をいう。)であること。

ロ.当該医療機器について有効な基準適合証が交付されていること。

ハ.当該医療機器の滅菌の方法が、ロ.の基準適合証に係る医療機器等適合性調査等を受けた医療機器の滅菌の方法と異なるものであること。

ニ.当該医療機器の滅菌を行う登録製造所が、過去5年以内に、当該医療機器の滅菌の方法と同一の滅菌の方法についてQMS調査に適合していないこと。

(3)承認等に係る体外診断用医薬品が、次のイ.からハ.までのいずれかに該当するものである場合(ただし、当該体外診断用医薬品に適用可能な基準適合証が発行されており、かつ、当該体外診断用医薬品と同じイ.からハ.までの区分について、当該基準適合証と同一製品群区分・同一登録製造所の体外診断用医薬品に係る適合性調査又は追加的調査が行われていない場合に限る。)

イ.生物由来製品

ロ.製造工程においてナノ材料が使用されるもの

ハ.マイクロマシンであるもの

(4)承認等に係る医療機器等の登録製造所が、当該医療機器等について有効な基準適合証に記載された登録製造所のうち滅菌等製造所のみが異なる場合において、当該承認等に係る医療機器等の滅菌等製造所について過去5年以内にQMS調査に適合していない場合。

(5)医療機器等の承認等の承継を受けた者が当該医療機器等に係る基準適合証と同一製品群・同一登録製造所の医療機器等について適合性調査を受けなければならないときに、当該基準適合証を初めて活用しようとする場合。

(6)その他厚生労働大臣又は登録認証機関が必要と認める場合

 

 QMSの手順書とは?

医療機器で製造業や製造販売業、修理業などの許可を得るには、申請後に立会い審査を受ける必要がありますが、立会い審査にはQMS省令に基づく手順書が必要となります。

当事務所では、QMS省令に基づく手順書の作成も代行・サポートを行っております。
ご費用については、こちらをご参照ください。

許可の内容によっても異なりますが、主なQMSの手順書としては、次のようなものがあります。
※各書類の内容をまとめることも可能です。

◎品質方針及び品質目標

◎品質管理監督システム基準書(品質マニュアル)

医薬品卸書類◎規格が要求する6つの「文書化された手順」書
・文書の管理規定
・記録の管理規定
・不適合製品の管理規定
・内部監査規定
・是正処置規定
・予防処置規定

◎文書、記録の保管期間に関する手順書

◎品質管理業務に関する手順書

この他は、自社が必要とする文書や規格が要求する記録となります。

QMSのバリデーションとは?

医療機器の製造工程の品質管理マネジメントの内容を定めるQMS省令には「バリデーション」という用語が出てきます。

「バリデーション」とは、医療機器を製造する施設の構造設備や手順と工程、その他製造管理や品質管理の方法が期待される結果を与えることを、科学的根拠をもとに検証し、文書化することによって、目的とする品質に適合する製品を恒常的に製造できるようにすることを目的としたものです。

この目的を達成するためには、開発、日常的な工程確認と製品品質の照査を含んだ製品ライフサイクルを通じて集積した知識や情報を活用する必要があります。

また、開発や技術の確立が、外部で行われた場合には、必要な技術移転を実施する必要があります。

参照する技術移転は新しい知識や研究だけではありません。苦情によって判明した欠点の品質改善や、業務の中から経験によって生まれた改善プロセスなども対象になります。

これらの情報を文書化し、高い品質で、安定的な製造が行えるようにします。

熟練の従業員が辞めて新しい従業員が入っても、文書化された工程マニュアルで各種基準をチェックしながら、マニュアルに記載された客観的な数値科学的な判断をもとに、今までと変わりなく製品が製造できるようにしましょう。

QMSを適用しなくてよい製造所とは

医療機器や、体外診断用医薬品を作って販売するためには、品質管理監督システム基準書、つまりQMSの作成が必要となります。製造販売を行う方や製造業を行う方は、それぞれ定められたQMSに従って、日々の業務を行わなければいけません。

では、体外診断用医薬品などの、反応系に関与しない成分を含む構成品を製造する場合など、そのような工場についてもQMSは適用する必要があるのでしょうか。

じつは、登録製造所以外の製造所においては、QMS省令の各規定を直接遵守する義務はありません。しかし、義務こそありませんが、これらの製造所は、製造販売業者又は登録製造所のQMSにおける購買管理等で、適切に管理されていることが必要となります。

なお、製造販売業者等と製造所の取決め等のもとで、管理の手法として、当該製造所にQMS省令に基づく製造管理及び品質管理を採用することも、もちろん製造販売を行う企業の選択肢として取りうる方法の一つとなっています。