GVPの主な内容
GVPとはGood Vigilance Practiceの略です。医薬品の品質を保証しなければならないことはGQPでお伝えしましたが、こちらは製造販売後の安全管理についての基準となります。
GQPでも医薬品を市場販売した後の調査・報告義務がありましたが、GQPはあくまで品質不良等についてのものだったのに対し、GVPは主に副作用や感染症を対象とした、販売後の安全管理となります。
GVPが必要とされる理由は、大きく分けて3つあります。
1つ目は、製品の設計不良や製造工程のミスなどによる製品不良や不具合の原因を改善していくため
2つ目は、製品を市場へ出荷した後、複数の施設で様々な使われ方をして初めて発覚する製品不良や不具合への対策を行うため。
3つ目は、製造販売後も、様々な情報収集を絶えることなく集め続ける必要があるため
GVPを作り、製造販売業者の継続的な改善への取り組みによって、保健衛生上の危害の発生と拡大を防止するという事が、GVPの最大の目的です。
以下が、第一種製造販売業者に適用されるGVPの主な内容です。
1. 総括製造販売責任者の業務について(第3条)
2. 安全確保業務に係る組織及び職員について(第4条)
3. 製造販売後安全管理業務手順書の作成(第5条)
4. 安全管理責任者の業務(第6条)
5. 情報の収集(第7条)、検討、措置の立案(第8条)や実施(第9条)
6. 市販直後調査(第10条)
7. 自己点検(第11条)、教育訓練(第12条)
ちなみに、第二種製造販売業者は上記2については規定がありません。
では、一つずつ説明します。
1. 総括製造販売責任者の業務について(第3条)
総括製造販売責任者とは、言ってしまえば製造販売業の最高責任者ということになります。
安全管理責任者を監督したり、報告を受けて所要の措置を決定したりする者のことです。
総括製造販売責任者の業務についての規定は、GVP省令中の第3条に規定されています。
製造販売業者は、次の各号に掲げる業務を総括製造販売責任者に行わせなければならない。
一 安全管理責任者を監督すること。
二 前号の安全管理責任者の意見を尊重すること。
三 一の安全管理責任者と品質保証責任者その他の処方せん医薬品又は高度管理医療機器の製造販売に係る業務の責任者との密接な連携を図らせること。
例えば、添付文書の改訂が行われるなどした場合に、製品流通への影響がでないよう現場への連携を行い、切り替えミスを防ぎ、MRへの教育、使用者への周知を十分に行い、必要な情報が提供できるようにします。
また、PMDAへの届出も遅延の発生しないように業務を行う必要があります。
安全管理責任者からは、さまざまな情報・報告が文書で提供されますので、それら意見を尊重し、業務に影響があるなら業務の改善措置やその他の必要な処置を行うようにします。
詳しい要件等は、「総括製造販売責任者等」をご覧ください。
2. 安全確保業務に係る組織及び職員について(第4条)
適正な安全管理を行うために、安全確保業務の統括に係る部門として安全管理統括部門を設置しなければなりません。
GVP省令では、医薬品等の製造の際に、製造販売業者が取るべき安全確保業務についての規定がされています。(第4条)
安全管理統括部門のポイントは以下の通りです。
・総括製造販売責任者の監督の下にある
・安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する人員を十分に有すること
・医薬品の販売部門などから独立していること
さらに製造販売業者は、次に掲げる要件を満たす安全管理責任者を置かなければなりません。
一 安全管理統括部門の責任者であること。
二 安全確保業務その他これに類する業務に三年以上従事した者であること。(第一種の場合のみ)
三 安全確保業務を適正かつ円滑に遂行しうる能力を有する者であること。
四 医薬品等の販売に係る部門に属する者でないことその他安全確保業務の適正かつ円滑な遂行に支障を及ぼすおそれがない者であること。
3. 製造販売後安全管理業務手順書の作成(第5条)
こちらも品質管理業務手順書と同様、安全管理業務の手順を示すマニュアルです。
製造販売業者は、製造販売後安全管理を適正かつ円滑に行うため、以下の項目の手順について、記載しなければなりません。
一 安全管理情報の収集に関する手順
二 安全管理情報の検討及びその結果に基づく安全確保措置の立案に関する手順
三 安全確保措置の実施に関する手順
四 安全管理責任者から総括製造販売責任者への報告に関する手順
五 安全管理実施責任者から安全管理責任者への報告に関する手順(第一種のみ)
六 市販直後調査に関する手順
七 自己点検に関する手順
八 製造販売後安全管理に関する業務に従事する者に対する教育訓練に関する手順
九 製造販売後安全管理に関する業務に係る記録の保存に関する手順
十 品質保証責任者その他の処方せん医薬品又は高度管理医療機器の製造販売に係る業務の責任者との相互の連携に関する手順
十一 その他製造販売後安全管理に関する業務を適正かつ円滑に行うために必要な手順
製造販売業者は、製造販売後安全管理に関する業務に従事する者の責務及び管理体制を文書により適切に定めなければなりません。
また、総括製造販売責任者又は安全管理責任者に、安全確保業務の適正かつ円滑な実施のために必要な事項を文書により定めさせる必要があります。
安全管理情報の収集に関する手順書又は安全管理情報の検討及びその結果に基づく安全確保措置の立案に関する文書を作成し、又は改訂したときは、当該手順書又は文書にその日付を記録し、これを保存する必要があります。
総括製造販売責任者又は安全管理責任者が安全確保措置の実施に関する手順の文書を作成し、又は改訂したときは、当該文書にその日付を記録させ、保存するようにしましょう。
4.安全管理責任者の業務(第6条)
製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、次に掲げる業務を安全管理責任者に行わせなければいけません。
一 安全確保業務を統括すること。
二 安全確保業務が適正かつ円滑に行われているか確認し、その記録を作成し、保存すること。
三 安全確保業務について必要があると認めるときは、総括製造販売責任者に対し文書により意見を述べ、その写しを保存すること。
5. 情報の収集(第7条)、検討、措置(第8条)の立案や実施(第9条)
医薬品製造販売業者は、収集したこれらの情報を検討し、必要がある場合には廃棄や回収、販売の訂正などを行わなければなりません。
安全管理責任者や安全管理実施責任者に、下記の情報を収集させ、記録を作成する必要があります。
一 医療関係者からの情報
二 学会報告、文献報告その他研究報告に関する情報
三 厚生労働省その他政府機関、都道府県及び独立行政法人医薬品医療機器総合機構からの情報
四 外国政府、外国法人等からの情報
五 他の製造販売業者等からの情報
六 その他安全管理情報
製造販売業者は、安全管理実施責任者に前項に規定する業務を行わせる場合には、安全管理実施責任者に前項の記録を文書により安全管理責任者へ報告させる必要があります。
また、安全管理責任者に、収集・報告させた記録は保存しなければいけません。
他にも、製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、次に掲げる業務を安全管理責任者に行わせなければならないとされています。
一 安全管理情報を遅滞なく検討し、その結果を記録すること。
二 安全管理情報について、品質保証責任者が把握する必要があると認められる場合は、当該安全管理情報を品質保証責任者に遅滞なく文書で提供すること。
三 検討の結果、必要があるときは、廃棄、回収、販売の停止、添付文書の改訂、医薬情報担当者又は医療機器情報担当者による医療関係者への情報の提供又は法に基づく厚生労働大臣への報告その他の安全確保措置を立案すること。
四 前号の規定により立案した安全確保措置の案について、総括製造販売責任者に文書により報告し、その写しを保存すること。
製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、安全管理実施責任者に検討に必要な解析を行わせる場合にあっては、次に掲げる業務を安全管理責任者に行わせなければなりません。
二 安全管理実施責任者にその記録を作成させ、文書により安全管理責任者へ報告させるとともに、これを保存すること。
製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、次に掲げる業務を総括製造販売責任者に行わせなければなりません。
二 安全確保措置を安全管理責任者に行わせる場合にあっては、その実施につき文書により指示し、これを保存させること。三 安全確保措置を安全管理実施責任者に行わせる場合にあっては、その実施につき文書により指示するとともに、その写しを安全管理責任者に保存させること。四 安全確保措置を安全管理実施責任者に行わせる場合にあっては、当該安全管理実施責任者にその記録を作成させ、文書により報告させるとともに、その写しを安全管理責任者に交付させること。五 前号及び次項第四号の規定に基づく報告を確認し、必要な措置を決定すること。
2 製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、次に掲げる業務を安全管理責任者に行わせる必要があります。
二 安全確保措置を安全管理実施責任者に行わせる場合にあっては、その実施につき文書により指示し、その写しを保存すること。
三 安全確保措置を安全管理実施責任者に行わせる場合にあっては、当該安全管理実施責任者にその記録を作成させ、文書により報告させるとともに、これを保存すること。四 安全確保措置の実施の結果等について、総括製造販売責任者に文書により報告し、その写しを保存すること。五 安全管理実施責任者の作成した報告の写しを保存すること。
6. 市販直後調査(第10条)
事前に調査の目的や方法、調査期間等を決定した上で、市販直後調査実施計画書を作成して調査に当たる必要があります。
GVPには、製造販売業者が医薬品の販売を開始した後に、医薬品の適正な使用を促し、症例等の発生を迅速に把握するための市販直後調査に関する規定があります。
製造販売業者は、市販直後調査を行う場合は、その行う市販直後調査ごとに、総括製造販売責任者又は安全管理責任者に、次に掲げる事項を記載した市販直後調査実施計画書を作成させる必要があります。
一 市販直後調査の目的二 市販直後調査の方法
三 市販直後調査の実施期間
四 その他必要な事項
また、製造販売業者は、総括製造販売責任者又は安全管理責任者が市販直後調査実施計画書を作成し、又は改訂したときは、市販直後調査実施計画書にその日付を記載させ、これを保存する必要があります。
なお、製造販売業者は、総括製造販売責任者がその業務を行う事務所に市販直後調査実施計画書を備え付けるとともに、市販直後調査を行うその他の事務所にもその写しを備え付ける必要があります。
製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等及び市販直後調査実施計画書に基づき、安全管理責任者に市販直後調査を行わせるとともに、次に掲げる業務を安全管理責任者に行わせなければいけません。
一 市販直後調査が適正かつ円滑に行われているかどうか確認すること。二 市販直後調査の実施に関する記録を作成し、これを保存すること。
三 必要があると認めるときは、市販直後調査実施計画書を改訂すること。
7. 自己点検(第11条)、教育訓練(第12条)
製造販売業者は、製造販売後安全管理業務手順書等に基づき、あらかじめ指定した者に製造販売後安全管理に関する業務について定期的に自己点検を行わせなければなりません。
製造販売業者が自己点検の際に行わなければならないポイントは以下の通りです。
・あらかじめ指定した者が安全管理責任者であるときは、安全管理責任者に前項の自己点検の記録を作成させ、保存させるようにします。
・あらかじめ指定した者が安全管理責任者以外の者であるときは、当該者に自己点検の記録を作成させ、安全管理責任者に対して文書により報告させるとともに、これを安全管理責任者に保存させます。
・安全管理責任者に自己点検の結果を製造販売業者及び総括製造販売責任者に対して文書により報告させ、その写しを保存。
・総括製造販売責任者に自己点検の結果に基づく製造販売後安全管理の改善の必要性について検討させ、その必要性があるときは、所要の措置を講じさせるとともに、その記録を作成させます。また、安全管理責任者にその記録を保存させるようにします。
従業員に対する教育訓練も重要な業務になります。
・総括製造販売責任者に教育訓練計画を作成させ、保存させます。
・製造販売後安全管理業務手順書等及び前項の教育訓練計画に基づき、あらかじめ指定した者に製造販売後安全管理に関する業務に従事する者に対して、製造販売後安全管理に関する教育訓練を計画的に行わせます。
・あらかじめ指定した者が安全管理責任者であるときは、安全管理責任者に前項の教育訓練の記録を作成させ、これを保存させます。
・あらかじめ指定した者が安全管理責任者以外の者であるときは、当該者に教育訓練の記録を作成させ、安全管理責任者に対して文書により報告させるとともに、これを安全管理責任者に保存させます。
・安全管理責任者に教育訓練の結果を総括製造販売責任者に対して文書により報告させ、その写しを保存させます。
なお、安全管理責任者の資格要件等につきましては、「総括製造販売責任者等」をご覧ください。
GVP省令の安全管理情報の収集や安全確保処置の実施とは?
安全管理責任者又は安全管理実施責任者は、取引先の病院・薬局などの医薬医療の関係者からの情報提供や、研究センターの論文などの文献、学会から発表される会報などの情報から、品質、有効性、安全性に関する事項や、医薬品を適正に使用するための情報を収集し、その記録を作成する必要があります。
情報収集活動の中で集められた安全管理情報は安全管理責任者が責任をもって解析や検討を加えて、場合によっては製品の回収や廃棄、販売停止処置や他の医療機関への情報提供などを行うようにします。
また、場合によっては副作用などについて厚生労働大臣への報告などの案全確保措置案を立案し、医薬品等総括製造販売責任者に文書で報告もする必要があります。
作成した文書は、GVP省令により、「保存することとされている文書その他安全管理業務に係る文書及び記録は、当該記録等を利用しなくなった日から5年間保存」する必要があります。
また、生物由来製品に係る記録については「利用しなくなった日から10年間」、特定生物由来製品に係る記録については「利用しなくなった日から30年間」保存する必要があります。