GMPが適用される医薬品とは
GMPとは、製造販売業者や製造業者に求められる製造管理や品質管理に関する基準の事です。
ほとんどの医薬品はGMPが対象となるのですが、じつは対象となる医薬品の範囲は医薬品医療機器等法の施行令で決められています。
GMP省令では、まず、GMPが適用されない医薬品をリストとして掲載し、それ以外はGMPが適用されるという形で適用範囲を定めています。
GMPが適用される医薬品は、次に掲げる医薬品「以外」の医薬品となります。
(1)専らねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の駆除又は防止のために使用することが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないもの
(2)専ら殺菌又は消毒に使用されることが目的とされている医薬品のうち、人又は動物の身体に直接使用されることのないもの
(3)専ら前二号に掲げる医薬品の製造の用に供されることが目的とされている原薬たる医薬品
(4)生薬を粉末にし、又は刻む工程のみを行う製造所において製造される医薬品
(5)薬局製造販売医薬品
(6)医療又は獣医療の用に供するガス類のうち、厚生労働大臣が指定するもの
(7)前各号に掲げるもののほか、日本薬局方に収められている物のうち、人体に対する作用が緩和なものとして厚生労働大臣が指定するもの
(8)専ら動物の疾病の診断に使用されることが目的とされている医薬品のうち、動物の身体に直接使用されることのないもの
(9)専ら動物のために使用されることが目的とされているカルシウム剤のうち、石灰岩又は貝殻その他のカルシウム化合物を物理的に粉砕選別して製造されるもの
上記(1)から(9)が、GMPが適用されない医薬品です。そして(1)から(9)以外の医薬品は適用されるという事ですので、身体に直接使用されるような医薬品(頭痛薬・かぜ薬等)は間違いなくGMPの適用対象になるという事がわかります。
GMP省令のバリデーションとは?
GMP省令では、バリデーションというあまり聞きなれない用語が出てきます。
バリデーションとは、製造所の構造設備や製造の手順・工程・その他の製造管理や品質管理の方法が、その手順のとおりに行えば期待される品質の製品がきちんと製造できる事を検証し、文書化する事によって、目的とする品質に適合する製品をいつも製造できるようにすることです。
この目的を達成するためには、医薬品開発、日常的な工程確認、製品品質の照査を含む製品ライフサイクルを通じて集積した知識や情報を活用する必要があります。医薬品開発や技術の確立がその製造所以外で行われた場合には、必要な技術移転も実施する必要があります。
1)設備、システム、装置
2)製造工程
3)洗浄作業
「設備」には製造設備だけでなく、製造環境制御設備等も含まれます。「システム」には製造用水供給システムや空調処理システム等の製造を支援するシステムも含まれます。上記のものに対して実施すべきバリデーションは以下の通りです。
1)適格性評価
2)プロセスバリデーション
3)洗浄バリデーション
4)再バリデーション
5)変更時のバリデーション
GMPで要求される一般区分製造所の構造設備とは?
安全で高品質な医薬品を作るために、GMP省令では区分や製造所の違いに合わせて様々な規則を定めています。
区分とは、一般区分製造所、無菌区分製造所、包装等区分製造所の事を指します。
これとは別に、特定生物由来医薬品等製造所について規則を定めています。
一般区分製造所の構造設備の構造設備規則第6条第4号イでは、作業所は照明が適切であることと規定されています。
これは、採光も含め、作業の種類に応じてその作業に支障がないように必要な照度を確保できるようにしておくことを定めたものです。
採光により照度を確保することができる場合でも、作業の種類に応じて必要な照度が確保されていないのであれば、照明に係る設備器具の設置がやはり必要となります。
一般区分製造所の構造設備の構造設備規則第6条第3号の規定では、トイレ(便所)及び更衣室(更衣を行う場所)についても定めています。
トイレと更衣室は製造所内に設置する必要がありますが、施行通知に示されておりますとおり、トイレは、前室、通路等により、作業室と隔てられる構造が求められますが、更衣室は必ずしも更衣のための専用の部屋の設置は求められておりません。また、トイレ及び更衣室には手洗い設備や衛生管理を考慮した適切な設備が必要になります。
GMP省令の一般区分製造所で要求される密閉構造とは?
GMP省令では、高品質で安心安全な医薬品を市場に提供できるように、様々な医薬品の製造に関する規定が定められています。
その中で、作業所に関する規定は「構造設備規則」と呼ばれていますが、一般区分の製造所では、以下のような構造設備が求められています。
イ 照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること。
ロ 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。
ハ 作業を行うのに支障のない面積を有すること。
ニ 防じん、防虫及び防そのための構造又は設備を有すること。ただし、医薬品の製造の用に供されることが目的とされている原薬たる医薬品(以下「原薬」という。)に係る製品の最終の精製を行う前の製造工程を行う作業所であって、当該製造工程の製造設備が密閉構造である場合においては、この限りでない。
ホ 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。
ヘ 製品等(法第十四条第二項第四号に規定する政令で定める医薬品に係る製品を除く。)により有毒ガスを取り扱う場合には、その処理に要する設備を有すること。
上記のニに関し、「密閉構造」という言葉が出てきますが、原薬に係る製品の製造において用いられる反応釜、ろ過器及び晶出釜などもこの密閉構造と考えて差支えないとされています。(種晶投入等の作業中に蓋を開ける際には汚染防止に注意しましょう)
また、この製造設備が密閉構造であって、製造作業中に蓋等の開閉により原薬に係る製品が外気に暴露することがなければ、屋外の設備を使用してもよい場合もあります。
GMP適合性調査の流れについて
GMPの適合性調査は、実地調査か、書面調査かのいずれかの形で実施されます。
どちらの形で実施されるかは、申請を受けた調査権者が決定します。製造管理や品質管理に注意を要する程度や過去の実地調査の結果、過去における不適合や回収状況、提出された書類の内容などを勘案した上で、優先度の高いものは実地調査が決定されます。
なお、国内の製造所については、過去2年間以内にGMP調査が
行われていない場合には、原則として実地調査が行われます。
また、外国の製造所については、相手国のGMP基準や運用と適合状況により実地調査か書面調査課が決定されます。外国の製造所が相手国の基準に合致していることの証明書の提出はもちろん必要になりますが、その提出を以て書面調査になるとは限りません。相手国の基準に適合していたとしても、必要に応じて実地調査が行われる場合もあります。
GMP省令における製品や資材の受入れ時の注意点とは?
医薬品や医薬部外品を製造する場合、その品質や安全を維持するためにGMP省令で様々な基準が定められています。
このGMP省令の第10条の4号と5号では、製品や資材の受入れや保管に当たって注意するように定められています。
GMP省令の製品等及び資材の受入れ及び保管上の注意事項の例としては以下のような注意点があります。
(1)製品等及び資材の個々の容器又は一群の容器は、識別コード、ロット番号又は管理単位番号、受領番号等により識別表示し、当該番号により各ロット又は各管理単位の配置、移動等を管理すること。また、各ロット又は管理単位の管理状態(例:「試験検査中」、「合格品」、「不合格品」、「返品」、「出荷可否決定待ち」、「出荷可」、「出荷不可」、「回収品」、「廃棄」等)を確認することができるようにすること。
(2)製品等及び資材は、分解、汚染及び交叉汚染を防止するような方法により取り扱い、保管すること。
(3)製品等及び資材が保管されている容器(ファイバードラム、箱等)は、原則として直接床に置かないものとし、他の方法により対処することができる場合を除き、清浄化及び検査を行うために必要な場合には適切な間隔をあけて置くこと。
(4)製品等及び資材は、その品質に悪影響を及ぼさない条件及び期間の下で保管され、通常、最も古いものから順次使用されるように出納を管理すること。
(5)不合格と判定された製品等及び資材については、許可なく製造に使用されることのないよう、識別され、区画して保管すること。
輸出用医薬品のGMP適合性調査とは?
国内で流通する医薬品は、GMPに従って製造販売されています。
輸出用医薬品も、外国政府や国際機関から、製造管理や品質管理の方法が基準に適合しているかどうかの証明を求められる場合があり、その際には国内流通医薬品と同様に、GMPに従う必要があります。
なお、輸出用であってもGMPの対象範囲は国内と変わりません。
輸出用医薬品のGMP適合性調査の注意点は以下の通りです。
(1)輸出用のGMP省令適用医薬品の製造業者は、その医薬品の製造を開始する前と製造開始後5年ごとに、輸出用医薬品適合性調査を受ける必要があります。
(2)MRA(相互承認協定)の相手国等への輸出又はそれ以外の国等への輸出であっても適合性証明書の発給を申請する品目を製造しようとする場合は、適合性調査の申請を行う必要があり、適合性調査で適合とされなければ、製造所からの出荷はできません。
(3)輸出用医薬品を製造しようとするときにGMP適合性調査を受けるべき対象施設は、外部試験機関を含む輸出用医薬品の製造に関係する全ての製造所となります。
(4)もし輸出用医薬品が、国内流通用でのGMP適合の調査結果が出ていても、輸出用は話が別になりますので、改めて輸出用医薬品としてGMP適合性調査を受ける必要があります。
(5)調査の実施主体は、国内の承認品目と同じで、国内がPMDAなら輸出用もPMDA,国内が都道府県の場合は輸出用も都道府県となります。ただし、輸出用医薬品には再審査がないため、国内の承認品目が新医薬品の場合でも調査賢者は都道府県となります。
(6)調査対象は原則として国内に所在する製造所となります。