そもそも医薬品って?
一般的に「薬」といえば、病気やケガの治療に使われるものを考えがちですが、医薬品とはそれだけではありません。「薬事法」の第二条によれば、「医薬品」とは以下のものを指します。
1 日本薬局方に収められているもの
2 人や動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされているもの
※機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品を除く
3 人や動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの
※機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品を除く
では、もう少し細かく見ていきましょう。
1 日本薬局方に収められているもの
日本薬局方というのは、厚生労働大臣が定めた医薬品の規格基準書です。これには、化学薬品等と生薬等を合わせて約2000品目程度が収載されています。(令和元年6月に追補が行われました。)
例えば、よくヨーグルトに含まれるアロエなども、葉肉や根などは食品ですが、葉の液汁は医薬品に該当します。
また、変わったものではハチミツや酸素なども、医薬品として扱われています。
2 人や動物の疾病の診断・治療・予防に使用されることが目的とされているもの
私たちが一般的に薬に持つイメージは、この中の「治療」に使用されるものでしょう。
その他に、「予防」に用いられるものとしてワクチンなどがあります。
また、「診断」に用いられるものとして健康診断等で飲むバリウムや、妊娠検査薬などがこれに該当します。
3 人や動物の身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的とされているもの
こちらの定義で重要なのは、「必ずしも治療等が目的でなくてもよい」ということです。
例えば避妊薬である「ピル」や勃起不全治療薬である「バイアグラ」などがこの定義に当てはまり、医薬品として取り扱われています。
また、プロテイン等は一般的に食品として扱われるものが多いようですが、中には筋肉に「影響を及ぼすことが目的」とされているとして医薬品扱いとなる場合もあるため、注意が必要です。
食品と医薬品の違い
ここで当然のように浮かぶ疑問は、はたしてハチミツは「食品」なのか「医薬品」なのか、という点でしょう。
結論から言ってしまえば、その両方であるのです。
薬事法では「目的規制」という規制を取っています。簡単に説明しますと、薬事法ではそのものが疾病の診断・治療・予防、身体の構造や機能への影響を目的で扱われるなら、「医薬品」として取り扱われるのです。
例えば先ほどのハチミツの例で言えば、糖分の摂取を目的とした栄養補助剤として販売される場合は「食品」に当たりますし、慢性疲労や高血圧、胃潰瘍等の抑制への効き目が大きいことを宣伝して販売したら、「医薬品」として取り扱われることになるのです。
医薬品の区分
さて、上記のものが医薬品となるわけですが、医薬品はその販売方法や効能により、細分化されています。
また、医薬品とよく似たものとして、医薬部外品等があります。
まずはこちらの図で全体をご覧ください。
医療用医薬品
・主に病院等医療機関における医師の診断と処方に基づき使用される医薬品
・効き目が強く、重大な副作用を起こす危険もある
つまり、医療用医薬品というものは病院や診療所の窓口で直接もらうか、医師の処方せんを薬局に持っていき、薬剤師に調剤してもらうかの方法で手に入れる医薬品のことです。
医療用医薬品は、さらに2つの区分に分かれます。
1 処方せん医薬品
※「正当な理由」とは、災害時や救急救命処置などの場合を指します
処方箋医薬品とは、病院、診療所、薬局等へ販売又は授与する場合を除き、薬局や医薬品の販売業者が、医師、歯科医師、獣医師から処方箋を受け取った方以外の人に対して、正当な理由なく、販売し、又は授与してはならない医薬品として厚生労働大臣が指定している医薬品の事です。
処方箋医薬品の指定は、以下の基準によって行われます。
- 医師等の診断に基づき、治療方針が検討され、耐性菌を生じやすい又は使用方法が難しい等のため、患者の病状や体質等に応じて適切に選択されなければ、安全かつ有効に使用できないもの
- 重篤な副作用等のおそれがあるため、その発現の防止のために、定期的な医学的検査を行う等により、患者の状態を把握する必要があるもの
- 併せ持つ興奮作用、依存性等のため、本来の目的以外の目的に使用されるおそれがあるもの
この処方箋医薬品を製造販売するには、第一種医薬品製造販売業許可を受ける必要があります。
2 1以外の医療用医薬品
こちらの医療用医薬品は、一般用医薬品では対応できない等やむを得ない場合、必要最小限の販売個数に限定したり、記録を作成したりするなどの事項を順守する場合であれば、処方せんなしでも薬局において薬剤師の対面販売を行うことができます。
一般用医薬品
・薬局やドラッグストア等で販売される医薬品
・効き目がそれほど強くなく、人体に対する作用が著しくないもの
つまり、一般用医薬品は医療用医薬品とは違い、処方せんなしで購入が可能な医薬品、ということになります。俗に「市販薬」「OTC医薬品」等と呼ばれることもあり、入手が比較的容易なものを指します。
ただし、注意しなければならない点が一つあります。
薬事法では、一般用医薬品とは、「薬剤師等医療関係者から提供された適切な情報に基づき自らの判断で購入」するものと定義されています。
つまり、薬剤師や医薬品登録販売者などが常駐していないコンビニエンスストアなどでは販売が出来ない、ということになります。
一般用医薬品も、その効能等により以下の3つに区分されます。
1 第一類医薬品
以下の条件の両方に当てはまるものが、こちらに分類されます。
・新一般用医薬品であって、厚生労働省で定める期間を経過しないもの
・その副作用等について注意が必要で、厚生労働大臣が指定するもの
2 第二類医薬品
※第二類医薬品に分類される医薬品には、第一類に準じて注意すべきものとして「指定第二類医薬品」となっているものもあります。
3 第三類医薬品
以上が、医薬品の分類となっております。
医薬品以外のもの
さて、薬事法では医薬品ではないが、医薬品に準ずるもの等も定義されています。
医薬部外品
これは、次に掲げるものであって、人体に対する作用が緩和なものを指します。
以下、具体例を挙げながら説明します。
用途 | 具体例(目安) |
①吐き気や不快感、口臭、体臭を防止するもの | 口臭スプレー、制汗スプレー、うがい薬 |
②あせも、ただれ等を防止するもの | シェービングクリーム、ただれ防止クリーム |
③脱毛の予防、育毛や除毛が目的のもの | 発毛剤、除毛剤 |
④ねずみ、はえ、蚊、のみ等を防除するもの | 殺虫剤、蚊取り線香、ねずみ駆除剤 |
⑤その他厚生労働大臣が指定するもの | コンタクトレンズ装着薬、ヘアカラー、浴用剤、整腸薬 |
ここで注意しておきたいのは、⑤に分類されるものは必ずしも「医薬部外品」に当たるとは限らない、ということです。
例えば整腸薬などでは、特に作用が強いものなどは「医薬品」に分類されることになる場合もあります。
つまり医薬部外品とは、「作用が緩和で副作用の発生が少ない、医薬品と化粧品の中間に位置するもの」ということができます。
詳しくは、「医薬部外品とは」をご覧ください。
化粧品
こちらも薬事法における定義を、具体例を挙げながら説明します。
用途 | 具体例(目安) |
①人の身体を清潔にするもの | 化粧水、歯磨き粉、石鹸 |
②人の身体を美化し、魅力を増進し、容貌を変えるもの | 口紅、ファンデーション |
③人の皮膚や毛髪を健やかに保つもの | 毛髪用ワックス、ボディローション |
ここで注意したいのは、「生理的な作用を期待するものは、化粧品には当てはまらない」ということです。例えば整髪が目的のワックスなどは化粧品、育毛効果のあるシャンプー等は医薬部外品、脱毛症治療剤などであれば医薬品になります。
石鹸なども、成分や効能によって医薬部外品にもなれば、医薬品に分類されることもあるのです。
ちなみに化粧品の使用方法としては、身体に塗ったり、またはスプレーしたりして使用されることが必要です。つまり飲用や注射によって使用する様なものは、化粧品の定義には当てはまりません。
詳しくは、「化粧品とは」をご覧ください。
医療機器
政令で定められた、けがや病気の治療・予防等に用いられたり身体に影響を及ぼしたりする器具を医療機器と呼びます。
電化製品売り場でよく見かけるマッサージチェアや、体温計、コンドームなども医療機器の範囲に含まれます。
医療機器は、その副作用や機能障害のリスクにおいて3つに分類されます。
分類 | 具体例(目安) |
高度管理医療機器 | ペースメーカー、AED、人口骨、コンタクトレンズ |
指定管理医療機器 | 補聴器、マッサージチェア |
管理医療機器 | 電子血圧計、MRI |
一般医療機器 | ピンセット、体温計 |
こちらもリスクや副作用等の大小により分類されているものなので、場合によっては他の区分に分類されるものもあります。
また、日本の医療機器は国際医療機器名称GMDN(Global Medical Device Nomenclature)を取り入れた日本医療機器名称JMDN(Japan Medical Device Nomenclature)が示されており、国際基準GHTFルールに基づいて分類がされています。これにより、一般医療機器は国際クラス分類ではクラスⅠ、管理医療機器及び指定管理医療機器はクラスⅡ、高度管理医療機器はクラスⅢ及びⅣに分類されることになります。
詳しくは、「医療機器とは」をご覧ください。
その他の医薬品の仲間
医薬品の仲間ではありますが、少し変わった位置づけの医薬品に、体外診断用医薬品というものがあります。
体外診断用医薬品とは、専ら疾病の診断を目的とする医薬品のうち、人や動物の体に直接使用せず、体外で使用するものをいいます。
病原性の菌を特定する培地や、抗菌性物質を含有する細菌感受性試験培地やディスクもこれに含まれます。(昭和60.06.29薬発第662号)
目的としては、以下のいずれかを目的とするものがその範囲に入ります。
ア 各種生体機能(各種器官の機能、免疫能、血液凝固能等)の程度の診断
イ 罹患の有無、疾患の部位又は疾患の進行の程度の診断
ウ 治療の方法又は治療の効果の程度の診断
エ 妊娠の有無の診断
オ 血液型又は細胞型の診断
対象としては、検体中の次の物質や項目を検出するものが範囲に入ります。
ア アミノ酸、ペプチド、蛋白質、糖、脂質、核酸、電解質、無機質、水分等
イ ホルモン、酵素、ビタミン、補酵素等
ウ 薬物又はその代謝物等
エ 抗原、抗体等
オ ウイルス、微生物、原虫又はその卵等
カ pH、酸度等
キ 細胞、組織又はそれらの成分等